2012年御翼5月号その1

連続殺人鬼vsシングルマザー

 2005年3月、アメリカ・ジョージア州の刑務所から、監禁容疑で逮捕されたブライアン・ニコルズが脱走した。ニコルズは看守から鍵と銃を奪い、隣接する法廷で自分を担当している判事を逆恨みで殺害、闘争する間に更に3人を射殺する。連続殺人犯となった彼は、アトランタ郊外で5歳の少女と暮らすため、2日前に引っ越してきたばかりのアシュレイ・スミス(26)の家に潜伏する。アシュレイは、4年前に夫がナイフで殺害され、シングルマザーとして娘と必死で生きていた。  ニコルズが押し入ったのが午前2時で、アシュレイは朝10時には、実家にあずけている娘を迎えに行かなければならないと犯人に言う。当初は銃で脅していたニコルズも、アシュレイの置かれている環境を知るにつれ、次第に態度を和らげ、「話し合い」が始まった。その中でアシュレイは、リック・ウォレン牧師の著書『人生を導く5つの目的』から以下の内容を引用した。(「真のしもべはどのように行動するのか」リック・ウォレン『人生を導く5つの目的』より)

あなたは一体 何をしたいのか
人に愛されることで神に愛される
何をするにしても始めはうまくいかないもの
失敗しながら私達は少しずつ学んでいく

あなたは今持っているもので最善を尽くす

『そのうちに』『機が熟したら』とは言いません
状況が整うのを待っていたら何一つ成し遂げることなどできない
神はあなたにあなたがいるその場所で
できる範囲のことをするようにと期待している


神はあなたの前に助けを必要としている人を置き
あなたに成長する機会を与えている
いつも縁の下の力持ちでなくてはならない
出世しようとしたり注目を集めようとしない
(マルコ10:43「あなたがたの中で偉くなりたい者は、皆に仕える者になり…」)


人から頼りにされていますか?
守るべき約束、責任はありますか?
神はある目的をもってあなたを今いる所に置かれた
神はあなたを次の場所まで精一杯愛する
(日本テレビ2012年3月21日放送「ザ!世界仰天ニュース」で紹介された内容)


 アシュレイは、もし自首すれば、他の囚人に命の大切さを教えることもできるし、人生には意味があるのだと話した、7時間に及ぶ説得の後、ニコルズは自首したが、その際、「君は神が送ってくれた天使だ」とアシュレイに語り、その言葉が新聞に載った。しかし、アシュレイ本人に言わせれば、過去の自分は「天使」とはほど遠かったという。
 1978年、クリスチャンホームに生まれたアシュレイであるが、幼い頃両親が離婚、母が学校の先生をしていたため、母方の祖母や叔母に育てられた。アシュレイは、10代で妊娠、出産の2カ月前に殺害された夫と結婚する。シングルマザーとなってからは、良い母親となりたかったが、覚せい剤に手を出し、神からも離れていた。しかし、2005年3月11日、ブライアン・ニコルズが押し入ったことで、全ての状況が変わる。彼女が所有していたリック・ウォレン牧師の本から、はからずも神の道を説くように神に用いられたアシュレイは、その後、信仰に立ち返ったのだ。
 今日では、アシュレイは毎週、教会で神を礼拝し、週日の聖書研究会にも出席、再婚し、更に男の子も与えられた。今は、新たにされたイエス・キリストとの関係をとても大切にしており、救いだされた体験を語ることで、神の国を広めたいと情熱を持っている。天使とは程遠かった自分のような存在も、神の国の遣いとして用いられる、という希望を人々に与えようとしている。彼女の著書『天使とは程遠い―アトランタの人質の正体』はニューヨークタイムズのベストセラーとなっている。

 欲望に支配されたニコルズの生活は、霊的な死への途上にあった。しかし、アシュレイの説得により、その思いは平和なものとなり、命への道を歩み始めた。またアシュレイ自身の人生も、神の栄光に満ちた光り輝くものへと変えられたのだった。

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